2022/26/07 / 執筆 Margarita Núñez
機械翻訳をいつ使うか
機械翻訳(MT)を使用したコンテンツの翻訳に関して、ローカライズ業界に携わる人はどの立場でも非常にしっかりとした意見を持っている傾向があります。さまざまなテクノロジが登場し、MTを使った良い経験もあれば悪い経験もあり、それによりMTを再度利用することに非常に大きな抵抗感を示す翻訳者もいます。しかし、一方でMTがコンテンツの翻訳を始めるには最適な方法だと推奨する翻訳者もいます。ニューラル機械翻訳 (NMT)エンジンの開発により、多くの翻訳会社が良いソリューションを提供できますが、ベストな結果を得るためには、プロフェッショナルな翻訳会社をご利用ください。
MTを使うか、使わないか
実際は、プロジェクトによっては、速くかつ正確に完了させるためにMTを使う必要がない場合もあります。一方、納期までにコンテンツの翻訳を完了する唯一の方法がMTという場合もあります。ベストな進め方は、一連の基準と明確な目標を作って、「MTを使うか、使わないか」という問題に答えられるようにすることです。最終的に、機械翻訳を使うという決定ができるようになります。
検討すべき7つのポイント
1. サイズ
プロジェクトに膨大な量のコンテンツが含まれる場合、おそらく、MTの使用がプロジェクトを納期に間に合うように予算内で完了させるための唯一の方法となるでしょう。平均的なプロのネイティブ翻訳者が1言語当たり1日に翻訳できる量は 2000ワードになるということを考慮すると、翻訳者のチームが数百万ワードのプロジェクトを完了するのにどれくらいの時間が必要になるでしょうか?答えは、とても長い時間です。
2. 種類
資金を投資するコンテンツがメインの製品、アプリケーション、Webサイトではなく、ユーザドキュメント、技術マニュアル、FAQ、ヘルプシステムなどの場合、パートナーとなるご利用の翻訳会社と長期的なMT戦略を検討することをおすすめします。
3. 使用期間
翻訳するコンテンツが、消費者のフィードバック、メールの内容、消費者からのレビューなどすぐに「消費」されるものである場合、MTの使用を検討することをおすすめします。これらの翻訳は長い期間使われるものではないからです。すぐに使われなくなるものや1度しか読まれないものに最高の品質は必要ありません。
4. 予算
予算が限られている、あるいはさらに悪い場合は、予算がまったくないという状況では、MTが唯一の選択できる手段かもしれません。販売につながり、会社に利益をもたらす投資として翻訳をお考えください。
5. 納期
翻訳チームは、何もないところから翻訳するのではなく、既に機械翻訳されたテキストに対して翻訳を始めるので、MTにより翻訳プロセスが大幅に効率化されます。これにより、翻訳者は翻訳済みコンテンツのポストエディットで、微調整や変更を行い、対象読者がより理解しやすいコンテンツにする作業をさらに速く行えるようになります。TMは大規模なプロジェクトがより迅速に進むことを可能にし、多くの場合、厳しい納期までに膨大な量のテキストの翻訳を完了する唯一の方法となります。
6. 品質
ニューラル機械翻訳が大幅に改善され、事実上使われていますが、非技術系のコンテンツはニュアンスを含む内容である傾向があり、機械翻訳が単に理解できない意味が多く盛り込まれている場合があります。そのため、機械翻訳されたコンテンツをポストエディットすることが常に推奨されます。人手翻訳に近い高い翻訳品質を求めるのであれば、MTを実施してからポストエディットをするのが明確な選択肢と言えます。
7. 言語
すべての言語が機械翻訳で同じように処理できるわけではありません。構造が複雑で、語彙にさまざまなニュアンスが含まれる言語では、機械翻訳ツールが意味を捉えることができない場合があります。そのため、言語によっては、より多くのポストエディット作業(そしてより多くの時間とお金)が必要になります。ロマンス諸語が機械翻訳に最も適しています。スカンジナビア諸語とゲルマン系言語は一定のポストエディットが必要になります。スラブ系言語とアジア系言語はさらに多くのポストエディット作業が必要になります。
トピック: 記事, ローカライズテクノロジ, ビジネス戦略, 文書の翻訳
執筆 Margarita Núñez
Margaritaは、SimulTransのグローバル市場担当ディレクターで、複数のチャンネルを使った社内外に向けたキャンペーンのためのコンテンツの作成、管理、公開を行い、SimulTransのデジタルマーケティングを指揮しています。ローカライズ業界のセールスと管理に25年以上の経験があります。また、多くのローカライズの組織に携わり、現在はグローバルな非営利団体であるWomen in Localizationにおいても積極的に活動しています。