2026/09/09 6:00:02 / 執筆 Margarita Núñez
医療機器プログラム(SaMD)の翻訳
本記事では、SaMDをローカライズする際のベストプラクティスについて説明します。SaMD(Software as a Medical Device/医療機器プログラム)とは、単体で機能し、意図する用途に基づいて医療機器に該当するソフトウェアを指します。例えば、AIを利用した医用画像解析ソフトウェア、臨床意思決定支援アプリ、遠隔モニタリングプラットフォーム、ヘルスケアアプリなどがあります。
SaMDの翻訳・ローカライズサービス
効果的なSaMDのローカライズには、以下のような幅広いサービスが含まれます。
1. ユーザーインターフェース(UI)のローカライズ
SaMDのユーザーインターフェースの翻訳は、単に文字列をある言語から別の言語に置き換えるだけではありません。UIのローカライズには、テキストの拡張・縮小への対応(言語によっては、英語と比べて必要な表示領域が大幅に増減する場合があります)、日付形式・測定単位・数値形式の調整、エラーメッセージ・アラート・臨床上の警告を正確に伝えるための調整などが含まれます。SaMDでは、UI要素(投与量に関するアラートや診断閾値など)の誤訳が、患者の安全に直接影響を及ぼす可能性があります。
ソフトウェアローカライズのエンジニアとテスターは、包括的な機能テストと言語品質保証(LQA)を実施し、ローカライズされたSaMDが対象言語・地域で正しく動作することを確認します。
2. 取扱説明書(IFU)およびラベルの翻訳
規制当局は、対象市場の公用語でIFUおよび医療機器のラベルを提供することを義務付けています。SaMDの場合、画面上のヘルプコンテンツ、ユーザーマニュアル、クイックリファレンスガイド、アプリケーション内に表示されるデジタルラベルなどが対象となります。
ISO 17100認証を取得した翻訳プロセス(資格を有する医療翻訳者による翻訳と、別の分野専門家による独立したレビューを含む)により、IFUおよびラベルに含まれるすべてのコンテンツについて、正確性、一貫性、規制要件への準拠を確保できます。
3. 臨床・規制関連文書の翻訳
SaMDを提供し、市場での認可・承認の取得を目指す企業は、テクニカルファイル、ソフトウェア設計文書(SDD)、ISO 14971に基づくリスクマネジメントファイル、臨床評価報告書(CER)、市販後監視(PMS)報告書など、幅広い規制申請文書を提出する必要があります。
必要なすべての言語に対応し、翻訳から関連サービスまでを単一の窓口で一括して提供する医療ソフトウェアの多言語翻訳プロバイダーを利用することで、SaMDの市場認可取得に必要な規制関連文書を規制当局に提出するまでのプロセスの迅速化につながります。
4. 検証・バリデーション関連文書の翻訳
IEC 62304およびFDAのソフトウェアガイダンスに基づき、SaMDメーカーはソフトウェアの検証・バリデーション(V&V)活動を文書化する必要があります。SaMDをローカライズする場合、バリデーション関連文書(テストプロトコル、テスト報告書、トレーサビリティマトリクスなど)も翻訳し、監査に備えて適切に維持管理する必要があります。
検証・バリデーションに関するすべての成果物の翻訳に必要な経験・知見を有する医療機器ソフトウェアの翻訳チームを利用することは、大きなメリットにつながります。
5. 市販後監視・安全性監視関連文書
SaMDメーカーは、EU MDRに基づく継続的な市販後監視義務を遵守する必要があります。これには、有害事象報告書、市場安全性是正措置(FSCA)、市場安全通知(FSN)、定期安全性最新報告書(PSUR)などの翻訳が含まれます。
複数の法域における安全性監視に関する報告要件に対応するため、市販後監視関連文書をすべて同じチームで翻訳できる体制を整えておくことが重要です。これにより、遅延を回避し、文書間の一貫性を確保できます。
6. 翻訳におけるリスクマネジメント
IMDRF(国際医療機器規制当局フォーラム)は、SaMDを、対象とする医療状況の深刻度と、臨床上の意思決定を行うためにSaMDが提供する情報の重要性に基づいて分類しています。高リスクのSaMD(重篤な状況や生命を脅かす状況で使用されるもの)では、より厳格なバリデーションと文書化が求められるため、翻訳についてもさらに厳格な品質保証が必要となります。
高リスクのSaMD(AIを活用したがん検診、敗血症予測アルゴリズムなど)では、バックトランスレーションと、臨床分野の専門家による独立した言語レビューを実施することがベストプラクティスです。
SaMDのローカライズにおけるベストプラクティス
SaMDのグローバル展開に携わる規制対応、品質、製品の各チームには、以下のベストプラクティスを推奨します。
- SaMDの開発ライフサイクルの早い段階(理想的には設計段階)から翻訳パートナーに参画してもらい、国際化(i18n)の要件をソフトウェアアーキテクチャに組み込めるようにします。
- 翻訳を開始する前に、対象言語ごとに医療用語集とスタイルガイドを作成し、UI、IFU、規制関連文書全体で用語の一貫性を確保します。
- 翻訳メモリと用語管理ツールを活用し、ソフトウェアの段階的なアップデートや規制申請に伴う翻訳のコストを抑え、所要時間を短縮します。
- UI設計では、テキストの拡張を考慮します。ドイツ語、フランス語、フィンランド語などでは、英語の原文と比べてテキストが20~30%長くなる場合があるため、UIレイアウトでこうしたテキストの拡張に対応できるようにする必要があります。
- 高リスクのSaMDについては、臨床用語の正確性を検証するため、対象市場の言語を母語とする医療従事者による現地言語レビューを実施します。
- 監査や規制当局への申請時に規制要件への準拠を示せるよう、機器の設計履歴ファイル(DHF)またはテクニカルファイルに翻訳バリデーションの記録を保持します。
- 安心してサービスを利用できるよう、貴社の監査担当者による正式な翻訳リスク評価に積極的に協力する言語パートナーを選定します。この評価では、ベンダー管理、技術スタック、用語管理、ファイルの取り扱い、データセキュリティを確認します。
SaMDの翻訳サプライヤーとしてのSimulTrans
医療・ソフトウェア翻訳で40年の実績を持ち、3つのISO認証を取得したSimulTransは、2025年に97%の顧客満足度を達成しています。また、医療機器およびSaMD業界における品質、コンプライアンス、スケジュール上の要件を満たすことを目的として、ISO認証に基づく厳格な翻訳プロセスを確立しています。
SimulTransのSaMD翻訳プロセスは、以下の4つの柱を基盤としています。
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ISO 17100認証取得済みの品質プロセス:SaMDの翻訳プロジェクトでは、すべてのプロジェクトで所定のワークフローに従い、翻訳だけでなく、資格を有する医療分野の専門家によるレビューも実施します。
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専門的な医療用語管理:お客様固有の医療用語集と翻訳メモリ(TM)を構築・維持管理し、UIの文字列から規制申請文書に至るまで、SaMD関連文書全体で承認済みの用語を一貫して使用できるようにします。
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ソフトウェアエンジニアリングとLQAテスト:SimulTransのエンジニアが、ローカライズされたSaMD製品を対象言語の環境でテストし、機能が正しく動作すること、テキストが適切に表示されること、ロケール固有の書式設定要件に準拠していることを検証します。包括的なバリデーションを実施するため、自動LQAツールと人手によるテストを組み合わせています。
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各市場の規制要件に関する専門知識:SimulTransのプロジェクトマネージャーと翻訳者は、FDA、EU、カナダ保健省、TGA(オーストラリア)など、主要な規制当局が定める各市場の言語およびローカライズ要件に精通しています。
SaMD分野は、人工知能、機械学習、デジタルヘルス、精密医療の進歩を背景に成長を続けており、正確で規制要件に準拠した翻訳・ローカライズサービスへの需要は今後さらに高まると考えられます。規律あるSaMDローカライズ戦略に投資する医療機器企業は、市場認可を迅速に取得し、製品の規制要件への準拠を維持するとともに、最終的には世界中の患者により良い医療アウトカムを提供できる体制を整えることができます。
SimulTransのSaMD翻訳・ローカライズサービスについて詳しくは、ISO認証取得済み医療翻訳サービスをご覧ください。次回のプロジェクトのお見積もりや、プロジェクト要件についてのご相談もお気軽にお問い合わせください。
トピック: 記事, 医療翻訳, 翻訳のベストプラクティス
執筆 Margarita Núñez
Margaritaは、SimulTransのデジタルマーケティングおよび事業開発プログラムを指揮しており、特に、ビジネスの成長を支えるデジタルマーケティング戦略の展開に注力しています。スペインの出身で、美術史の学士号とヨーロッパ研究の修士号を取得しています。
